【コラム】利酒師・国際利酒師の資格に価値はあるのか
贔屓や忖度、ステマなく、客観的視点で日本酒の資格「利酒師」及び「国際利酒師」資格に価値があるのか、あるとしたらどこで、何に生かせるのかフラットな目線で調査しました。結論、完全に趣味の領域レベルで、お酒のプロと名乗るのは誇大表現に当たり、酒店のプロモーションには生かせそうな資格です。
前提
色々と現実を並べる前に、前提の考え方を記載しておきます。
- そもそもお酒は趣味・嗜好の領域のもの
- 利酒師・国際利酒師は民間資格
- 取りたければ取ればいい
- 年会費のかかる資格は「認定協会が稼ぎたいだけ」がほとんど
- 客観的官能評価と好みは別物
珈琲、カクテル、紅茶などの資格でも同様、そのほとんどは趣味、嗜好品の延長線にあるもので、社会人、20歳を超えていて、自分で働いたお金を何に使おうが、自分の時間を何に費やそうが自由です。
ただし広告プロモーションや販売広告をするときには「誇大表現」や「誤解を招く表現」をしてはいけないルールがあります。特定商取引法やらなんやら色々な法律に記載されていることです。
例えば「利酒師=日本酒のプロ」と記載したら広告表現的にはNGですが、公式サイトにもあるように
「日本酒の有効なセールスプロモーションの実行力」を身につけるための資格
であることをきちんと伝えての商品プロモーションをしていれば問題はありません。利酒師の資格は、日本酒のテイスティングや基礎知識を身につけつつ、セールスに重きを置いている資格であることが、公式サイトにも記載されていますので、ここで消費者に誤解されていたら、まずアウトです。
利酒師取得にかかる費用
利酒師の資格を取得するのにかかる費用は以下のような感じです。
- 通信講座:78,400円
- オンデマンド1日集中:58,800円
- eラーニング:68,800円
※認定料25,000円、入会金19,000円、初年度年会費15,900円(非会員のみ)は別途
2日集中プログラム:139,100円
※認定料、入会金、初年度年会費(非会員のみ)含む
通信講座を受けたとしても、トータルでかかる費用は138,300円で、再試験を受けるタイプのものであれば追加で12,000円かかります。この「利酒師」および「国際利酒師」の資格は民間資格でしかなく、公的なお酒に関する資格ではありませんので、日本創芸学院やユーキャンの資格講座と同じです。
金額だけで見ると高い、という評価で大方一致するものと思います。
試験内容・スキルは金額に見合ったものか
利酒師、及び、国際利酒師の資格は、セールスを主体にするもののはずなのに、販売戦略、企画立案の他、セールスの基本のみを学び、試験されます。近年必須のSNS広告プロモーションや、IT戦略を織り交ぜた戦略、やってはいけない広告表現などについての試験が内容的には全く足りていないようで、セールスのプロでさえもない可能性があります。
参考:https://kikisake-shi.jp/exam/
国際利酒師に関しては、利酒師の内容を英語で学ぶだけで、国ごとの味覚の違いを考慮したテイスティング表現、各国のお酒文化を前提に考慮して行うセールス等に関する販売戦略やセールスを海外展開して行うものとしては必須の内容が入っているわけではないため、深みがない資格です。
取得するなら「清酒専門評価者」
もし日本酒のプロを目指すのであれば財務省所管の「独立行政法人 酒類総合研究所」で習得できる「清酒専門評価者」を目指しましょう。
正式:清酒の官能評価分析における専門評価者
英名:Sake Expert Assessor, NRIB
参考:https://www.nrib.go.jp/sake/seminar/ssh_info.html
こちらの「清酒専門評価者」資格は、唯一公的な日本酒の利き酒能力や醸造に関する知識を有することを証明できるものです。目指すならこちらを検討しましょう。広島での受講や応募条件はありますが、5万円ほどで受講可能です。