4mmp(4-mercapto-4-methyl-pentan-2-one)とは【香気成分と詳細】

2021年12月8日日本酒概要

4mmpとは、4-mercapto-4-methyl-pentan-2-one(4-メルカプト-4-メチル-ペンタン-2-オン/ワン)という香気成分のことで、ワインの製造時によく関わってくるもので、C6H12OS、式量132.223、知覚閾値は0.1~3.0(ng/L)、または、これに近いものと考えられます。




4mmpの基本情報

4MMPは、C6H12OS、式量132.223、知覚閾値は0.1~3.0(ng/L)と強い香気成分です。香りは猫の尿のような香り、燻製され発酵させた木質、マッシュルームを乳酸発酵させたかのような香り、カシス、「ほうきの木」の香りとも例えられるもので、独特。

 

4MMPに関係するワイン用ぶどう品種は

  • Scheurebe(ジョイレーベ)
  • Sauvignon blanc(ソーヴィニヨン・ブラン)
  • Gewürztraminer(ゲヴュルツトラミネール)
  • Riesling(リースリング)
  • Colombard(コロンバール)
  • Petit manseng(プティ・マンサン)
  • Semillon(セミヨン)
  • Cabernet sauvignon(カベルネ・ソーヴィニヨン)
  • Merlot(メルロー)

などで、多くのワインの香気成分として2004年時点では重要視されていたものです。

 

4mmpの合成方法

4mmpの合成過程は次のとおりです。

(ちょっと違ってたらごめん)

  1. トリエチルアミン(1mL)を含むテトラヒドロフラン(50mL)を含む「メシチルオキシド(5.0g、51mM)」を用意
  2. チオ酢酸(11.65g、153mM)を加えて、混合物を室温で一晩撹拌
  3. 混合物をエーテル(50mL)で希釈
  4. 水、10%水酸化ナトリウム溶液(*2)、水で連続して洗浄
  5. Na2SO4で乾燥
  6. 穏やかな蒸留により溶媒を除去
  7. チオアセテート(RーCH₃COSH)をオレンジ色の油として得られる(8.4g、94%)
  8. エーテル(25mL)中のチオ酢酸(1.44g、8.3mM)をヒドラジン水和物(0.83g、16.6mM)と共に室温で2時間撹拌
  9. 混合物を水で洗浄し、乾燥、濃縮
  10. 残留物をシリカゲルのクロマトグラフィー(5%エーテル:ペンタン)に付して、チオール(R-SH)を無色の油として得た(0.78g,71%)

出典元:Variation in 4-mercapto-4-methyl-pentan-2-one release by Saccharomyces cerevisiae commercial wine strains

簡単に言えば、あーだこーだ混ぜれば酵母にやらせなくても4MMPだけ合成できる上に、少量でも強い香りを持つので使い勝手は良いかもしれないというお話です。また、4MMPの前駆体Cys-4MMPを合成して、日本酒を発酵させる時に少し混ぜてやれば、自然な形で4MMPの香りをもたせることは可能かもしれないということです。

 

4MMPの生産量は、菌株と温度が大切

オーストラリアワイン研究所所蔵の「CWY 1〜8」に対応する株番号「AWRI 123〜AWRI 130」の「S. cerevisiae」に対して、4MMPの前駆体であるCys-4MMPを添加して40時間発酵させた所、最も4MMPを生産したのは

28度環境下のCWY-8

だったとのことです。培地の詳細に関しては割愛しますが、遺伝的・代謝的な視点では二硫化炭素リアーゼの反応が関係していると考えられています。

出典元:Variation in 4-mercapto-4-methyl-pentan-2-one release by Saccharomyces cerevisiae commercial wine strains

 

4MMPに重要な遺伝子

BY4742(YJL060W欠失株)は、野生型酵母株BY4742と比較すると、4MMP放出が41%減少します。また、BY4742で遺伝子YAL012W、YFR055C、YML004Cを削除すると、4MMPの量も53〜54%に減少するとのことで、

  • YJL060W
  • YAL012W
  • YFR055C
  • YML004C

などの遺伝子が4MMPに関与している重要な遺伝子だということが分かります。日本酒に4MMPの香り成分を出させたい場合には、これらの遺伝子を持つ「S. cerevisiae」を使用すると良いかもしれません。

 

ビールのホップにも含まれる4MMP

ビールのホップでは米国、オーストラリア、ニュージーランドの栽培品種ホップペレットで4MMPが生成されることも分かっています。銅イオンの含有量が少ないほうが4MMPの生成量は多くなるとの調査結果がありました。

出典:Comparison of 4-Mercapto-4-methylpentan-2-one Contents in Hop Cultivars from Different Growing Regions

 

ワイン飲めば良くない?

日本酒造りのいろいろな工夫は素晴らしいものですが、ワイン系の香りをのせれば確かに飲みやすくなるかもしれませんし、結局日本酒の発酵でも頑張ってくれる「S. cerevisiae」くんが関与するので、使えない技法ではないですが、ワインの香りに近づけたいなら、もう、ワイン飲めば良くないぃ?って思っちゃうので、どうなんだろう、という気持ちはあります。

 

やってみてもいいし、やってみなくてもいいと思います。

 

おいしく、かつ、楽しくお酒を嗜めればそれで良しとしましょう。

 

出典・引用

全国新酒鑑評会出品酒に含まれる4-mercapto-4-methylpentan-2-oneの解析

https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030926648.pdf

Yeast genes involved in sulfur and nitrogen metabolism affect the production of volatile thiols from Sauvignon Blanc musts

https://link.springer.com/article/10.1007/s00253-012-4198-6

Contribution of Volatile Thiols to the Aromas of White Wines Made From Several Vitis vinifera Grape Varieties

https://www.ajevonline.org/content/51/2/178.short

Comparison of 4-Mercapto-4-methylpentan-2-one Contents in Hop Cultivars from Different Growing Regions

https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf072173e

Genetic Determinants of Volatile-Thiol Release by Saccharomyces cerevisiae during Wine Fermentation

https://journals.asm.org/doi/full/10.1128/AEM.71.9.5420-5426.2005

Variation in 4-mercapto-4-methyl-pentan-2-one release by Saccharomyces cerevisiae commercial wine strains

https://academic.oup.com/femsle/article/240/2/125/544674?login=true

 

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Posted by 日本酒愛好家