悪酔い・二日酔いの原因と対処法【アルコール分解の仕組み】
お酒を飲んで悪酔い・二日酔いになった時には、とにかく水を飲み、休息し、同じ失敗を繰り返さぬよう自重を覚えましょう。ここでは科学的原因と対処法の解説、健康的なお酒の飲み方なども合わせて提案しています。お酒は20歳になってから、飲むなら乗るな、飲んでも飲まれるなを守って、楽しく嗜んでください。
悪酔い・二日酔いの対処法
悪酔い、二日酔いの原因は、その人自身で代謝できる量よりも多いお酒を飲んだことが原因です。これ以上も、これ以下もありません。悪酔いや二日酔いの正体は
- 代謝しきれていないエタノール
- 代謝しきれていないアセトアルデヒド
- ストレス
- 飲みすぎ
です。代謝できるお酒の量は各自の持つ分解酵素の量や能力によって変わりますので、身の丈より少し抑えめに飲むのがオトナな嗜み方です。
対症療法
アルコール度数約5%のビールを500ml飲んだ場合、完全に分解されるのに2時間~3時間かかるとされています。血液の巡りが悪いとエタノールやアセトアルデヒドが肝臓に再度届かないため、
- 水分摂取
- ビタミンB群の補給
- 玉ねぎや長ネギスープを飲む
- マカ・ウコンを摂取
- 時間が経つのを待つ
- 代謝中肝臓に負荷をかけない
- 身体を温めて寝る
などの対処をしてみましょう。あれやこれやしているうちに時間が経って、アルコールが代謝されてスッキリしてくるはずです。悪酔いしてしまったら一発で解決できる魔法のような方法はありません。サプリメントとかを飲んでもほとんど変わりはありません。代謝にかかる時間はそんな簡単に変えられません。
予防策
お酒を飲む前に胃袋をある程度いっぱいにしたり、水などをよく吸う食事をしていると、お酒の小腸からの吸収が緩やかになり、肝臓での処理が追いつきやすくなります。
- 飲酒前の食事
- 適量の飲酒に留める
- 肝臓の働きを助ける栄養を飲酒前から摂取
- ビタミンA・C・Eを摂取
- ビタミンB1・B12を摂取
- うなぎ・牡蠣・レバー・豚肉を食べる
体内に入ったアルコールは分解されるまで待つしかないため事前の対策が全てです。まずは飲みすぎないことですが、飲酒する前の日に、牡蠣、レバー、ビタミンB群の摂取を心がけておき、当日の飲酒前にもしっかりお腹を満たしておくと悪酔いしにくいです。
悪酔いしないことと、アルコールの分解が終わっていることとは別問題です。ビール500ml(エタノール20g)を一瞬で飲んだら、約2時間~3時間かけて分解していきますが、それは吸収されてからの話です。ビール500mlを3時間かけてちまちま飲んだ場合、飲み終えた瞬間からまた約1時間~2時間ほどかけて分解されます。1時間に分解できるお酒の量は各自異なりますので、お酒の飲み方によってはアルコール分解にかかる時間は変わります。
また、滑面小胞体で働くMEOSというエタノールをアセトアルデヒドに分解する別の代謝経路があり、これは日頃から適量のお酒を摂取していることで盛んに働くようになる代謝経路だと言われています。日頃から飲みすぎない適量のお酒を嗜んでいると、ある時少し多めに飲んでもなんとかなるのは、こうした人体の慣れによるものが一部あります。
アルコール分解の仕組み
お酒を飲んだあと、食道、胃(約20%吸収)、小腸(約80%吸収)、血中へと流れていって、エタノールの代謝は肝臓で行われます。
ヒトの脳はこれらの代謝されていないエタノールやアセトアルデヒドなどへの感受性のようなもの(表現的にあれですが)があります。飲酒したあと、すぐに代謝できないアルコールは血液に乗って一度巡り、再び肝臓に戻ってエタノールやアセトアルデヒドが代謝されていきます。
この時、代謝が追いつかないほどの量のエタノールを摂取していると、エタノール分解、アセトアルデヒド代謝が終わらなくなり、身体の各部位にもエタノールやアセトアルデヒドが残存することになり、細胞(各部位の細胞)を傷つけるようなイメージで悪酔い、二日酔いとなります。
エタノールが肝臓にたどり着いてからは、なんやかんやあって以下のように代謝されていきます。
- エタノール
- アセトアルデヒド
- 酢酸
- 水+二酸化炭素+他
主にADH(アルコール脱水素酵素|アルコール分解酵素とも)がエタノールを分解してアセトアルデヒドに変換します。しかし、アセトアルデヒドは人体にとって有害なため、できる限り早めにACDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)によって酢酸に変換されます。
NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)だのなんだのは一旦置いておくとして、色々な重要な代謝系を重ねてエタノールは分解され、形を変えて排泄されていきます。
飲酒後血中濃度のピークは30分~2時間後に現れ
消失速度の平均値は男性でおよそ1時間に9g、女性で6.5g程度です[2]。ビール中ビン1本(20g)が、分解されるのにおよそ男性では2.2時間、女性では3時間程度
参照元(リンク)
厚生労働省のe-ヘルスネットのデータによると、30分~2時間で血中のアルコール濃度が最も高くなり、ビールの中瓶(500ml)のアルコールは男性2時間、女性3時間程度で代謝されるそうです。
アセトアルデヒド分解能力の違い
アセトアルデヒドが悪酔いや二日酔いの正体のようなものですが、このアセトアルデヒド脱水素酵素の働き方により
- 活性型(通常通り代謝)
- 低活性型(代謝が遅め)
- 非活性型(代謝がほとんど進まない)
の3つの活性タイプがあり、遺伝によってこの「ACDH|Acetaldehyde Dehydrogenase(アセトアルデヒド脱水素酵素)」の活性タイプが異なり、お酒に強い人、弱い人の差が生じます。
【基本】エタノールとは
お酒に入っているアルコールは、正式にはエチルアルコール(ethyl alcohol)、または、エタノール(ethanol)と名付けられており、
- 化学式:C2H6O
- 示性式:C2H5OH
- モル質量:46.07g/mol
- 沸点:78.29℃(351K|173℉)
- 密度:0.789 g/cm3
- 引火点:13℃
といった性質があります。小中学校の理科の実験ではアルコールランプの燃料として用いられたり、飲食店などでは殺菌消毒に用いられたりしています。消毒用や燃料用のアルコール消毒液には人体に有毒なメタノール(methanol)が含まれていることが多いため絶対に飲んではいけません。
お酒に入っているのはエタノールのみであって、メタノールは入っていません。
日本国内ではほとんどないですが、海外では密造酒が売られていることがあります。これには人体が分解できるエタノールだけでなく、メタノールが混ぜられていることがあり、そのメタノールの摂取により失明や死亡(最小致死量:0.3~1g/kg程度)を招くため、密造酒は飲んではいけません。メタノールが混入する要因は、単なる不勉強、安いため微量混ぜているなど考えられますが、海外現地であまりにも安く、きちんと密閉されていなかったよく分からないお酒は飲まないようにしましょう。
お酒に含まれているアルコールの量
一般的なお酒に含まれているエタノールの量を箇条書きにまとめました。参考にしつつ、各自の代謝できる量、悪酔いしない量を把握してお酒を嗜むようにしましょう。
お酒の容量(ml)×アルコール度数(/100)×0.8[エタノール比重]
例:アルコール度数15%の日本酒540mlを飲んだ場合
540×0.15×0.8=64.8g[エタノール量]
※私がほろよいする飲酒量の場合
- ビール500ml(5%):20g
- 日本酒1合180ml(15%):21.6g
- ワイン360ml(12%):34.56g
- 檸檬堂鬼レモン1本350ml(9%):25.2g
ワインに関してはグラス2杯のだいたいの量です。お店でグラスワインを頼むと出てくる量が1杯1合くらいだと思う…というちょっと適当なもんですが、計算した場合は上記のようになります。
1日に飲むお酒の量(目安)
1日に飲むお酒の目安量は、各個人が1時間で代謝しきれて、健康に害が生じない量でしょう。お酒に弱い方は量は減り、お酒に強い方は少し量を増やしても肝臓や血管系の病気など、何か持病を持っていないのであれば、それぞれに適量が変わります。
1日に飲んでも良いお酒の目安量を提示しているサイトもありますが、完全に個人差があるので当ページでは提示しません。人生で初めて飲む時は、飲みやすくて、お酒を嫌いにならずに済むような甘めのジュースのようなほろよいカルピスとかの方が良いでしょう。飲み慣れている方でも、調子に乗ってグイグイ飲んでいるといくつになっても吐くほど飲むかもしれません。その都度、理性を保てる飲み方をしましょう。
例えば、私個人の場合はそこそこ飲めるので3時間ほどかけながら、ゲームや動画でも見ながら日本酒を飲んでよければ720mlは飲めます。でも、お酒に酔いやすい方は日本酒をおちょこ1口の半分くらいでクラクラしちゃう場合があります。もっと酔いやすい方はお酒のニオイを嗅ぐだけでふわふわする…なんてこともあります。
お酒に強い人がいるのはなぜ?
先述の通り、胃や小腸からエタノールが吸収され、代謝しきれなかったエタノール、アセトアルデヒドが身体中、血液に乗って巡ってしまいます。この時、代謝されていれば悪酔いにも二日酔いにもなりませんが、代謝されきっていなければ悪酔いなどの要因になります。
特に、悪酔いの正体と言ってもまぁまぁ差し支えはないであろうアセトアルデヒドを分解する「ACDH|Acetaldehyde Dehydrogenase(アセトアルデヒド脱水素酵素)」が遺伝により活性が低ければ低いほど悪酔いしやすくなります。
また、体調不良や酵素の分泌が滞っている場合にも同じことが起き、本人の身体が分解できる以上のアセトアルデヒドが体内に残っていれば、分解しきれなかった分が身体の各部位に残って頭痛や末端の痛みなどにつながります。
体重の大きいヒトほど、血液量が多く、多少なりエタノールやアセトアルデヒドの保持に余裕が出る場合がありますが「ACDH|Acetaldehyde Dehydrogenase(アセトアルデヒド脱水素酵素)」の活性が低い場合は、お酒に弱いということになります。
身体が細くてもアルコール分解酵素ADHや「ACDH|Acetaldehyde Dehydrogenase(アセトアルデヒド脱水素酵素)」が他の人よりも多ければお酒には強いということとなります。
出典・参考
アルコールの吸収と分解(リンク)
アルコールが体に入ると|SUNTORY
https://www.suntory.co.jp/arp/alcohol/
アルコール代謝のしくみ|ASAHI
https://www.asahibeer.co.jp/csr/tekisei/health/action.html
酔いのメカニズム|KIRIN
https://www.kirin.co.jp/csv/arp/risk/mechanism.html
The Metabolism of Ethanol and Its Metabolic Effects
https://pharmrev.aspetjournals.org/content/24/1/67.short
Ethanol metabolism in men and women.
https://www.jsad.com/doi/abs/10.15288/jsa.1987.48.380
Aging and ethanol metabolism
https://ascpt.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/cpt1977213343
膜結合型キノプロテイン脱水素酵素の構造と機能
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-19570110/19570110seika.pdf
13: アルコール脱水素酵素(Alcohol Dehydrogenase)