紙パック日本酒で悪酔いする理由【醸造アルコールの質が違う】
巷では飲み過ぎが原因だと言われますが、山梨の日本酒ほぼ全てにあたる355銘柄以上、全国1,000銘柄以上の日本酒を飲んできて、自身の体で体験した対照実験的な飲み方では、紙パック日本酒は確かに悪酔いする確率が高いです。おそらく加えられている醸造アルコールと温度管理、保管方法に問題があります。
紙パック日本酒は悪酔いする
言い逃れできないレベルで、紙パック日本酒が悪酔いすることは体感で分かっている人は多いと思いますが、科学的根拠は少ないかもしれません。製造工程を考えると、日本酒を作る過程で
- 金属タンクで大量生産している
- 調合段階で不適切な組み合わせのアルコールや添加物を入れている
可能性が高いです。エタノール(アルコール)には純度というものがあり、お米と麹菌・酵母で発酵して生まれたアルコールと、化学的に生成・精製したアルコールでは話が全然異なります。金属タンクで大量生産して、撹拌が完ぺきにできていれば問題ないですが、洗浄不足だったり、撹拌不足だったりするとやはり味も質も下がります。
多くの紙パック日本酒は醸造アルコールが原材料に追加されていて、
- 紙パック日本酒1.8L:1000円前後
- 瓶詰め酒蔵日本酒1.8L:2000円前後
であることを考えると、田舎の小さな酒蔵の収支のそれを考慮したとしても、紙パック日本酒の大量生産品を飲んだ時だけやたら悪酔いするのは、エタノールの質が影響しているのは明らかです。他にあり得るとしたら
- 仕込み水の追加
- 糖類の追加
が原因で水の質が良くない、または、水道水に近いものを使っている、糖類・アミノ酸等の添加で合成清酒になっていて実質日本酒ではない可能性があります。他にも酒税法においては、原材料が全てお米でなくてもいいので、麦などが少し入っているか、お米そのものが質の悪いものが使われていて、発酵以前の質が悪いから安く済ませられていると考えるのが妥当です。
醸造アルコール・アル添は別に悪くない
醸造アルコールが入っていることそのものは法的に問題はないですが、意図が異なります。日本酒消費量が大幅に減っている今の御時世に、経費削減と品質低下させてまで紙パックの日本酒を全国流通させる意味はないです。それなのに、紙パックにこだわっているのは、それしか作れないからか、利益重視なだけか…。
もう江戸時代でもないので品質と価格維持のために低品質の醸造アルコールを無駄に加えなくてもよいです。精米歩合が70%に近くともおいしくなる技術も確立されているので、さまざまな要素から見ても資源の無駄にもなる紙パックで日本酒を売る必要はないです。
醸造アルコールの安全性データシートを見る(リンク)と95%濃度のエタノールも65%濃度のエタノールもあり、高濃度のエタノールならば薄めて使用すれば良いので、薄める過程の水の質が悪ければ風味は変わります。
手元に純度の高いエタノールを用意して、飲める量まで薄めて無味のエタノールを飲んだ場合と、純米酒を飲んだ場合では、エタノールの方が悪酔いします。ご自身で試してみてください。悪酔いの要因となるのはアルコールだけでなく、飲んだ時の味わいや風味、胃袋の状態なども関係するので醸造アルコールを安く抑えようとしているのは、悪酔いの原因の一つです。
また、安くてそんなにおいしくないコンビニで手に入ってしまう紙パック日本酒が、人生で初めて日本酒を飲む人の手に触らせることが日本酒文化の衰退やイメージダウンを招きます。昭和の頃からなのか、悪しき風習がずっと続いていて、実際に日本酒の生産量も人気も落ちていってるので、売り方も間違っているのは確実です。
純米酒の定義
酒税法第一章
第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
七 清酒 次に掲げる酒類でアルコール分が二十二度未満のものをいう。
イ 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
ロ 米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十を超えないものに限る。)
ハ 清酒に清酒かすを加えて、こしたもの
八 合成清酒 アルコール(次号の規定(アルコール分に関する規定を除く。)に該当する酒類(水以外の物品を加えたものを除く。)でアルコール分が三十六度以上四十五度以下のものを含む。第十五号ハ及び第十六号ロ並びに第八条第三号を除き、以下同じ。)、焼酎(連続式蒸留焼酎又は単式蒸留焼酎をいい、水以外の物品を加えたものを除く。第十一号において同じ。)又は清酒とぶどう糖その他政令で定める物品を原料として製造した酒類(当該酒類の原料として米又は米を原料の全部若しくは一部として製造した物品を使用したものについては、米(米を原料の全部又は一部として製造した物品の原料となつた米を含む。)の重量の合計が、アルコール分二十度に換算した場合の当該酒類の重量の百分の五を超えないものに限る。)で、その香味、色沢その他の性状が清酒に類似するもの(アルコール分が十六度未満でエキス分が五度以上であることその他の政令で定める要件を満たすものに限る。)をいう。https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=328AC0000000006
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000232366
純米酒は、お米と米麹だけで作られているものを指すと考えればおよそ正しいです。表示義務がないものとして、仕込み水と調整された水、乳酸菌などが挙げられますが、これらは悪酔いには直接関与しない要素です。
お米から醸造されたエタノールは、純度の高いエタノールとは少し状態が異なります。乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸といった有機酸を40種類近く同時に生成しており、その醸造環境での最適なバランスでエタノールが生成され、エタノールと他の生成物質が多少なり相互作用して、純粋なエタノールとは異なる状態になっている可能性もあります。純度の高いエタノールと異なるものであれば、体内での代謝にも変化が出るので酔い方にも差は出るでしょう。
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8502_sogo_01.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/100/5/100_5_305/_pdf/-char/ja
同じ条件で飲み比べした
1週間、全く同じ食事と生活習慣で、山梨の酒蔵(瓶)、新潟の酒蔵(瓶)、兵庫の酒蔵3社(紙パック)をそれぞれ1日に3合飲んで比較した所、紙パック日本酒だけはどうしても悪酔いが残りました。飲んでいる最中にも悪酔いしてるのが分かるくらいには「質が違う」ことを確認できました。
まずいかうまいかはこの場合関係なく、アルコールの代謝がうまくいくかどうかに関係するため、肝臓等が関与する=アルコールの純度と質が異なると考えるのが正確でしょう。私の経験に基づくと、伝統的手法の酒蔵の日本酒に比べると、多くの紙パック日本酒は悪酔いします。これは経験上、確定です。
唯一悪酔いしなかった紙パック日本酒は、
この銀パック、金パックと言われるメーカーのものだけでした。他のメーカーの紙パック日本酒はダメでした。
醸造アルコールとは
日本酒に加えられる醸造アルコールは、糖蜜、とうもろこし、サトウキビ等の穀物類を元にして製造されたアルコール(エタノール)で、これを加えることで風味や味わいにバランスが出ます。醸造アルコールは悪者ではないですが、お米から生成されただけの純米のアルコールに比べると純度や風味に差が出るのは当然です。
https://www.kirinholdings.com/jp/profile/organization/mercian/group/daiichi-alc/kome-alc/
醸造アルコールを添加した場合は「混成酒」として扱われるのが科学的に正確な判定ですが、酒税法においては清酒として扱うことになっているため、醸造アルコールの原料がなんであっても「一応、日本酒」という扱いになります。
醸造アルコールとは、でんぷん質物又は含糖質物を原料として発酵させて蒸留したアルコールをいうものとする。
(4) 醸造アルコールを原料の一部としたものについては、当該アルコールの重量(アルコール分95度換算の重量による。)が、白米の重量の10%を超えないものに限るものとする。
https://www.nta.go.jp/about/council/sake-bunkakai/021127/shiryo/02a.htm
国税庁の定義では、上記のようなものは醸造アルコールと表現して良いことになっており、紙パック日本酒の醸造アルコールがお米由来である必要はないんです。どれだけ取り繕って、隠して、言い訳をしようと、醸造アルコールが入っている日本酒カクテルみたいなものです。
ワインとビールとカクテルを合わせて飲むといわゆる「ちゃんぽん」した状態で、悪酔いの定番いわれる飲み方ですが、日本酒に醸造アルコールが添加されていてもこれに近い状態になります。お米由来のエタノールと、他の原料由来のエタノールが入っている状態は、味が安定していても混ぜ物を飲んでいるので肝臓への負担は増します。
濃度が異なる、また、混合具合が異なるエタノールを代謝するにはそれなりに内臓に負担がかかります。ビールならビールだけ飲んでたほうがマシですが、飲みすぎれば何でも悪酔いはするので、酔いやすさの濃度が高まるという感覚です。
大量生産品の製造量をカバーするには
日本酒生産量は酒造場1軒あたり、
- 兵庫県:977kL
- 京都府:962kL
- 埼玉県:358kL
- 新潟県:275kL
- 北海道:89kL
- 山梨県:83kL
で、件数や生産量によって比較すべき数値は変わりますが、この量の(全国のスーパーに並べるレベルの)紙パック日本酒を生産するために必要な醸造アルコールを用意するには、相当な量が必要で全てお米由来のものにすると採算が合わないので、安い原料による醸造アルコールを混ぜるしかないんです。
どれだけウェブサイトで質は悪くないと主張しようが、メディアが擁護しようが、飲み比べた時に「純米酒」に比べて確実に悪酔いするので、原材料の違いで見れば「醸造アルコール」が悪さしてるのは確実です。アセトアルデヒドの代謝効率が悪くなるわけなので、エタノールの純度が異なっていると考えるのが妥当です。
少量なら悪酔いしないのは当たり前
少量の飲酒であれば悪酔いしません。テキーラだってごく微量であれば悪酔いしないです。質の悪い酒でも少量であれば代謝が間に合うのは当然です。今回しているのはそういう当たり前の話ではないです。確実に酔う量を飲んだ時、次の日の悪い残り方をするかどうかの話です。
逆に獺祭や新政なんかはガバガバ飲んでも悪酔いしないものがあり、やっぱり瓶で売っていて、ちゃんと一定の金額かかるものは悪酔いしないというのは酒飲みなら実体験で分かっているはずです。質の低い紙パック日本酒でも少量なら悪酔いしないのは当然。
紙パック日本酒を飲んだ場合に悪酔いする、と経験している人が大勢いるのに、日本酒メーカーは何も悪くないと主張するのはもはや無理がある段階にあります。当然のこと、瓶の日本酒でも質の悪いものは下痢になりますし、悪酔いもしますが、あたる確率は瓶の方が低いです。
保存期間が長すぎ、保存環境が悪すぎる(常温)
日本酒はそもそも売れていないので、売り場にて紙パック日本酒は長期間、常温で保管されます。ほこりをかぶり、薄暗い棚の奥で、何ヶ月も温度管理もされずに保管されている事が多いものです。日本酒が売れまくっていれば商品の入れ替えも多く、新鮮なものが手に入るはずですが、売れていない場所では確実に古いものが並びます。
最近は紙パックの表面にビニール包装されているものも多いですが、香り移りを防ぐためのビニールが剥がれているものもちらほらあります。
出典・参考
日本酒の紙パック
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/74/6/74_6_361/_pdf/-char/ja
清酒の製法品質表示基準|国税庁
https://www.nta.go.jp/about/council/sake-bunkakai/021127/shiryo/02a.htm
清酒の製造状況等について
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizojokyo/2018/pdf/001.pdf
日本酒の成分と香味
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/46/5/46_330/_pdf